2010/03/14

必見ドキュメンタリー「こつなぎ」

13日、ドキュメンタリー作品「こつなぎ~山を巡る100年物語~」を観てきました。464席のホールは満席。エンドロールが流れ始めると、会場からは拍手が沸き起こりました。


現代に生きる私たちに多くのことを考えさせるドキュメント映画「こつなぎ」。作品は、盛岡から北50キロにある山間の小さな集落「小繋(こつなぎ)」で、「入会(いりあい)権※1」をめぐって起きた「小繋事件」を追ったものです。作品は1960年代、3人のジャーナリストが足繁くかよい記録した、フィルム、写真、音声に、近年あらたに撮影された映像で構成された作品となっています。

明治以前より「入会(いりあい)」という習慣があり、小繋も集落に隣接する小繋山を「入会地」とし、食料となる木の実、きのこ、山菜、蒔きや住宅となる木など、自然の恵みを農民たちが集落で分かち合っていました。「個々の家が必要な分だけしか採らない」が基本ルールです。

小繋は駅の右側にあたります。現在でも農地が非常に少なく、当時を考えれば入会地が農民の生活に欠かせないことがよく分かります。



明治に入り土地に対する私的所有権が取り入れられ、入会地であった小繋山も江戸時代より入会地を管理していた長楽寺の名義となりました。入会地の税金は農民が支払い、今までと変わりなく利用していました。その後、金貸しが土地の権利を買い取り、次に貿易商に転売しました(1907年/明治40年)。

1915年(大正4年)、集落で火災が発生、28戸のうち26戸が消失しました。農民たちは家を建てるために、材木を得ようと入会地に伐採に入るところを警察に阻止されました。当時、所有権が明確になっても、その上に存在していた入会については、入会権として認められていましたが、所有者が入会権を妨害したとして民事訴訟となり、1975年の調停にいたるまでの60年もの農民の戦いを描いたドキュメンタリーです。

この作品は、単に入会権をめぐる農民の戦いのドキュメントではなく、今、我々に課せられている課題、「政治と地域」、「地域のつながり」、「助け・協力」、「家族」、「森林保全」などなど、多くの課題解決の手がかりを与えてくれる作品だと思います。50年前、3人のジャーナリストは、何を伝えるために取材したのでしょう。その答えをだすのは、あなた方の役目ですよ、と言われているような作品でした。

公式ダイジェスト


「こつなぎ」の情報はこちら:こつなぎ上映委員会公式ブログ

今後の上映予定は以下の通りです。
5月中旬 東京・東中野ポレポレ(問い合わせ先
7月25日(日) 長野・松本市中央公民館Mウィング(問い合わせ先
現時点での上映は以上の通りですが、反響が大きいようですので各地で上映されるでしょう。

※1:歴史的には、明治に近代法が確立する以前から、村有地や藩有地である山林の薪炭用の間伐材や堆肥用の落葉等を村民が伐採・利用していた慣習に由来し、その利用及び管理に関する規律は各々の村落において成立していた。明治期にいたり、近代所有権概念の下、山林等の所有権が明確になる(藩有地の多くは国有地となった)一方、その上に存在していた入会の取り扱いに関し、民法上の物権「入会権」として認めた。なお、このとき国有地として登録された土地における入会権については、政府は戦前より一貫してその存在を否定していたが、判例はこれを認めるに至っている。(Wikipedia「入会権」より引用)

高崎経済大学論集「入会権と入会慣習(PDF)

投稿にあたり

投稿には15分以上時間をかけないことを課し、誤字脱字、文脈の揺れを気にせず書いています。テーマはエンターテイメントを中心とした雑記。