2013/02/18

観光キャンペーン「KOBE de 清盛2012」、経済効果は予想を超えたが、神戸のブランドを大きく下げた

神戸市は、昨年放映されたNHK大河ドラマ「平清盛」の観光キャンペーン「KOBE de 清盛2012」の試算報告の総括で、「神戸の歴史的関心が高まり、地域の新たな魅力づくりに寄与した」としている。市民の多くは、「これって本気で言っているの?」と思っているでしょう。

キャンペーンの兵庫県内への経済波及効果は193億円と試算(兵庫県立大学政策科学研究所試算)。193億円は平成11年度の県内総生産の0.09%に相当するという。

その根拠は、特設会場「ドラマ館」と「歴史館」への入場者数57万を基に、清盛関連観光客を約150万人と推計。日帰り客の消費額8500円/1人、宿泊客3万円/1人とし、飲食や土産などの直接効果128億、他産業への波及効果64億円と試算。日銀神戸支店がドラマ放映前の2011年8月に発表した予測150億円を上回る結果となった。また、関係業務に1753人の就業を誘発したと分析している。キャンペーン全体の運営や広報費用には10億円が投入された。

神戸新聞NEXT:大河「平清盛」経済効果は193億円 兵庫県内

まず、発表された入場者数は疑うべし。イベントなどで発表される入場者数は、実際にそこに訪れた人数ではなく、チケット販売枚数であることが殆どである。今回の場合、特設会場2か所の入場者数を57万としているが実際はそれよりも少ないと考えられる。入館料については以下の通りだが、セット券の片方しか使用されなくても、販売枚数=入館数となるので、そこで水増しが行われる。また、未使用のチケットがあった場合でも同様のことが行われる。つまりイベント終了後に発表される入場者数は、実際の入場者数より多く発表されていると考えた方がよい。博覧会や美術展などでは当たり前のように行われている。

このようなことから、経済波及効果の試算の基となった入場者数が正しくない場合、発表された経済効果193億円も下がる。そうなると、日銀が予測した150億が結構正しい数字ではないかと思う。

ドラマ館:大人600円(ドラマ館のみ)、700円(ドラマ館・歴史館セット券)
歴史館:大人300円(歴史館のみ)、700円(ドラマ館・歴史館セット券)

経済波及効果について発表数字が正しいのであれば、日銀予測を43億円上回る193億円であったことは喜ばしいいことだが、平清盛を目的に訪れた観光客の多くがガッカリしたことだろう。

例えば、特設会場「ドラマ館」と「歴史館」には、それぞれ2回訪問したが、内容が薄く、さっと見れば10分もかからない。ゆっくり見ても30分もあれば十分な内容であった。歴史館を訪れた時は、観光バスが団体客を多く連れてきていたが、来館者の反応について耳を傾けていると、多くの観光客が口々に「これだけ?」と言っていた。市内に点在する清盛ゆかりの地にどれだけの人が訪れただろうか。個人的に5か所訪れたが、観光客らしき人と出会うことはなかった。

残念ながら、観光キャンペーンの計画が始まろうとしていた時期に予測した通りの結果になったと思う。以下をご覧いただければと思う。

2011/01/29「平清盛と神戸観光について考えてみた
2011/08/04「平清盛での経済効果はありがたい。でも、その目的客のガッカリが心配
2012/01/08「言葉を失う神戸市の「平清盛」観光PRビデオ

観光キャンペーにおける経済効果は重要であるが、新たな神戸の魅力を創出できたか、神戸に対する好感度(ブランド)を高めたかという点も重要である。今回の観光キャンペーンは、新たな魅力づくりはできず、今まで積み上げてきた神戸に対する好感度も下げたのではないだろうか。

総括では、「神戸の歴史的関心が高まり、地域の新たな魅力づくりに寄与した」とあるが、正しくは、「神戸への関心は高まったが、その期待に十分に応えることができなかった。地域の新たな魅力づくりに寄与したとは考えにくい結果となった」と総括すべきではないだろうか。

日本人は観光関連イベントが、期待より下回ることに馴れている。よほどのことがないかいぎり怒ったりはしない、いいお客さん。「ま、こんなもんやろね」という評価は、日本の観光イベントでは好評としてカウントされる。こんなことをいつまでも続けていくのだろうか。

ガッカリさせられました。

投稿にあたり

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