19日、筆頭頭株主のゴールドマン・サックス・グループの(GS)100%子会社のSGインベストメンツ㈱が、USJに対し株式公開買い付け(TOB)を実施することを発表しました(GSインベストメントは、現在のUSJ筆頭株主であるGS100%子会社の100%子会社)。買付け期間は3月23日から5月21日、1株5万円で実施されます(約60%の株買取で約520億)。
現在のUSJ株価は低迷、一端全株を取得した上で非上場とし、経営体質の強化に取り組み、その後、企業価値を高め再上場し、差益を得るのでしょう。開業から今回の件までを見ていて、USJの企業存続手法について「なんだかよく分からないな~」と思われている方は 結構おられるのではないでしょうか。どのような形であれUSJが存続することで、従業員の雇用が守られ、大阪市には税収、我々は映画の世界を楽しめるので すから良いのですが・・・。
そこで、少しおさらいをしてみましょう。
USJは、大阪市などが出資する第三セクターとしてスタート し、2001年に開業しましたが、USJも各地のテーマパークに漏れず、大阪市をはじめ、土地所有企業などの寄り合い所帯経営で赤字経営が続きました。スパイダーマン建設にかかわる数十億円の費用の半分が予定通りに支払えない状況で、継続的な経営が難しい状態になっており、経営の建て直しは予断を許さない 状況になっていたようです。また、大阪市からの追加融資も議会で反対され、まさに緊迫した状況だったようです。
2004年米ユニバーサルから現社長のグレン・ガンペル氏が就任し、早期退職を含む大幅な経費削減や土地所有者への賃貸料値下げを行いながら、経済産業省の「産業活力再生特別措置法(プロジェクトファイナンス)に基づく事業再構築計画」の承認を得るために動き、承認を得て外資からの融資250億円を得たようです。この融資がゴールドマン・サックス(GS)100%子会社の㈲クレインホー ルディングスから行われたわけですが、もちろん融資には条件が付いていたそうで、5年以内に200億円を返済、そのために早急に上場を果たす事が必要で、筆頭株主が大阪市に変わりGS系ファンドのクレインホールディングスとなり、2007年3月に晴れて東証マザーズに上場を果たしました。上場は折り込み済 みの融資だったのでしょうね。
つまり、USJは開業3年目で、我々が想像する以上に厳しい経営状態にあったということです。
当時、GSが融資した案件の殆どは株価が上昇しましたが、USJもそれに漏れず高値を呼びました。しかし、その時私は(?_?)と思いました。USJの株価を支える企業価値はどこにあるのだろうと。数人の友人・知人もUSJ株を購入していますが、「何で買ったの?」と聞くと、「GSが・・・。」と必ず答えました。では、と以下の事を言うと、「そっか~」と、彼らはUSJのファンではありません。単にお小遣いが欲しかっただけなのでしょう。
- 土地は全て借地
- 全てのアトラクションは米国の版権が絡み、簡単に売買できるものではない。(コンテンツ利用に伴う、版権料、ユニバーサル本体に対するロイヤリティーなどを支払わなくてはならない)
- パークの運営ノウハウは、果たして資産になるのか?(私の考えでは、ならない)
- 将来、何を持って収益があがると判断できるのか?
既に、どのアトラクションを閉め、何に入れ替えるかチラホラと聞こえてもきます。この辺りの情報の漏洩に対してもしっかりしないといけないですね。
何はともあれ、今月スタートした夜のパレード「マジカル・スターライト・パレード」は好評のようで何よりです。
「産業活力再生特別措置法(プロジェクト・ファイナンス)」
USJは、日本で最初にプロジェクト・ファイナンスを活用して事業化されたプロジェクトで、簡単に言えば土地などの担保となるものを差し出さず、事業計画書(事業の予想収支が担保)だけで銀行団から融資を受けました。 とは言っても、大阪市が筆頭株主ですから、ある意味銀行団から見れば最高の保証人付きと言ったところだったのでしょう。