なぜなんだろうと考えると、それは人としての生き方の本質を知ろうとする流れと考えます。これは、ビジネスにおいても同様と思います。そして、その本質を知るための手引きとして「聖書」、「ドラッカー」が注目されているのではないかと思います。その流れは、今年に入り明らかに表面化してきました。
不況や先行き不安の時代には、占い師が儲かり、宗教の信者が増え、自己実現本が売れるると言われますが、最近の聖書やキリスト教に対する関心、ドラッカーへの関心は、それとは明らかに異なるように思えます。
特に3月に入り「ドラッカー」も目につきますが、今までとは少し違っているなと感じていることがあります。「聖書」や「キリスト教」に関する雑誌が出版され話題になったり、ビジネス誌などでも聖書を信仰の書ではなく人生の指南書としての視点で、取材やインタビューの記事が掲載されたりしていることです。NHKも「旧約聖書」を学ぶビジネスマンを取材していました。(日本ではあまり知られていないようですが、ドラッカーの経営理論の原点は聖書で、生涯キリスト教の活動を支援していたそうです)
3月に発売された、雑誌『pen』では「聖書とは? 教会とは? キリスト教とは何か」と70頁を超える特集を組んでいました。宗教色を完全に排除し、キリスト教の歴史と概要、新聖書については、「受胎告知」から「最後の審判」までのキリストの人生のトピックスを宗教画とともに、大変上手くまとめています。また、絵画・建築(教会)・音楽・映画についてなど、盛りだくさんの特集でした。インターネット上でも話題となり、雑誌は早々に完売、4月15日は特集が別冊として販売されました。写真もふんだんに使われており楽しく読めたところがよかったです。
4月には、季刊誌『考える人』で「はじめて読む聖書」と題した特集が組まれていました。識者6人のインタビューで構成されており、「神を信じないクリスチャン」ではじまる特集は、どれも大変興味深く、楽しめるものでした。また「私の好きな聖書の言葉」と題したアンケートを作家、エッセイスト、哲学者、評論家など33名から集めた頁も、大変おもしろいものでした。
この2冊を読むだけで、聖書って面白いものだったんだと気付かされます。
ビジネス誌でも面白い記事に出会いました。3月22日発売の雑誌『日経ビジネス』で、特集として「止まらぬ成長 デフレに屈せず 〜聖書とドラッカー〜」と題したもので、山崎製パンの社長、飯島延浩氏のインタビュー記事です。氏は、敬虔なクリスチャンであり、ドラッガーとも年に一回会っていたと言う、ドラッカーの徒であったそうです。
記事の中で、氏がいつも立ち返る言葉を紹介していました。「さばいてはいけません。さばかれないためです」。『新約聖書』 マタイの福音にある言葉だそうです。この言葉は、「人を『神』にしてはいけない」「人におもねってはいけない」という言葉が含まれており、人を神とすれば、その人に隷属し、利用されるだけになってしまうということと説明されてしました。少し年配の方であれば、自社成長のために他の企業や社員に従属を求めた企業は思い浮かぶのではないでしょうか。そして過ちに気づかず、変革をできなかった企業が退場をしていたことを。
氏は、クリスチャン経営というと特別なことをやっているように思われるだろうが、日本の経営者は意識せずにやっている。それは「ミッション(使命)」の原点を問い続けることで、経営がぶれなくなる。加えて、ドラッガーの経営者への「5つの質問」の第一番目に「あなたのミッションは何かを挙げている」と述べています。
経営学でも、信仰の場でも使われている「ミッション」。個人として、企業人として、社会に生きる1人としての使命は何かを問い続け、それを貫く重要性をあらためて考えさせられる記事でした。記事の最後は「右手に聖書、左手にドラッカー。製パン業界の巨人は孤独を恐れない。その強さは、揺るがない」と結んでいます。
日本のビジネスマンにも多くのキリスト教信者や聖書を経営の手引きにしている経営者がいることは意外に知られていません。その中の1人である元カネボウ薬品社長の三谷康人氏は、「不況で追い込まれたビジネスマンは、ハウツーに見向きもしない。みんな本質を求めている。ドラッカーが読まれるのは、彼のマネジメント理論がハウツーではなく聖書から導き出された本質だから・・・。」と述べておられるようです。
先行き不安な時代、「聖書」と「ドラッカー」が注目され、多くの国民が、今の日本の様々なコトのありかたについて本質を求めるのに対し、政府はそれを認知・理解しているのでしょうか。政府としての使命が何であるかを本当に問い続けているのでしょうか。あのぶれようを見ていると、そうとは思われませんね。
皆さん、ご存知だったでしょうか。
鳩山首相、麻生前首相も、キリスト教信者であることを。
という訳で、最近、聖書やキリスト教に興味津々です。