日本の観光業界からは「観光立国を目指して」と掛け声は聞こえてきますが、国家あげてのビジョンが見えてきません。ますます観光立国への道筋は険しいものとなるのではないかと考えてしまいます。
羽田空港が24時間の国際空港となりますが、「それで・・・」と、つい口から出てしまいます。今の観光行政を見ていると、3年先、5年先、10年先の観光立国日本の姿は浮かんできません。
例えば、自民党政権下で推し進められた空港建設、結果その殆どが赤字経営、新幹線も造りたくてしょうがなく、そんなに日本中を短時間で移動するためのインフラを整える必要があるのでしょうか。自治体の言い分は交通の利便性を高め、それにより産業を誘致し、雇用の確保と税収増を考えてのことなのでしょう。しかし、全自治体が競うように同じ事をやり、輪をかけて多くの空港を整備した結果、成果の出たと言える自治体がどれだけあるのでしょう。
産業誘致の次は観光客誘致、これもまた全国の自治体が競って観光誘致を行って結果が出せるのでしょうか。
全国の自治体が英語、韓国語、中国語のホームページを持ち、近隣の自治体とはこれといった連携もなく、国内外で成果の見えないPR活動に税金を投入し、担当されている方々は虚しさだけが残っているのではないでしょうか。
例えば観光客誘致については道州制的な考えをし、エリアごとに観光客誘致を考えたほうがよいのではと思います。エリア内でお買い物コース、日本の里山体験コース、温泉と文化遺産めぐりなど、幾つかのバリエーションを持ち、各エリアで完結するように考えられないのでしょうか。そうすることで、さまざまな観光のあり方がエリアで生まれ、一つの自治体ではできなかったさまざまな魅力ある観光商品が生まれるのではないでしょうか。
政府はカジノの営業許可を11ヶ所程度としています。これは道州制のエリア分けが背景にあるような気がします。関東と関西エリアについてはカジノ2つと考えると、道州制の区分と同等の数となります。既に九州、東北などは、近隣の都道府県とチームを組み誘致を進めています。将来を見据えた観光行政という意味では、道州制に基づいたエリア分けをしカジノを設置。エリア内で、さまざまな観光コースが楽しめ完結できるようにするのがよいのでないでしょうか。
以前にも書きましたが、韓国は既存のパークや観光施設のリニュアルを行い、ユニバーサル・スタジオ、パラマウント・ムービー・パーク(現在止まっている)、エバーランドの大改装(計画中)。アジアのハブ空港となった仁川空港には、既に多くの格安航空会社が乗り入れており、アジアのハブ空港としての機能を果たしつつあります。
韓国は明らかにアジアの観光客を自国で止め、日本海を渡らせないように画策しているとしか思えません。韓国のみならず、シンガポールしかり、ベトナム、マレーシアとカジノも含めテーマパークの誘致に積極的で、先日インドでユニバーサル・スタジオの計画も発表されました。
ユニバーサル・スタジオだけをみても、日本、シンガポール、韓国(来春着工)、インド。中国は交渉決裂となりましたが、水面下で動きが出ているとの噂も聞きます。つまり大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパンは、アジアの中で強いコンテンツと言えなくなった訳です。
本当に観光でメシを食おうと思っているのでしょうか。今、観光立国を本気で考え取り組まなければ、完全に手遅れになってしまうのではないでしょうか。今こそ、政府は毅然とした態度で指導力を発揮し、自治体と一丸となって観光による産業発展を目指して欲しいものです。
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(9月24日、AFP配信)
映画テーマパーク「ユニバーサル・スタジオの建設計画をシンガポールが発表した際、採算が取れるのかと疑う声があった。しかしオープンからわずか半年で来場者は100万人を超えた。
屋外型巨大テーマパークの新たな進出先として、今最も注目を集めているのはアジアだ。中国、インド、インドネシアなど経済新興国の台頭で豊かになってきたところに、航空運賃の安さが追い風となっている。
エンターテインメント娯楽産業専門の調査会社AECOMエコノミクスのクリスティアン・アーンアジア地域担当ディレクターは、「業界はアジアに移動しつつある。所得の増大と中流層の拡大、娯楽や余暇需要の高まり・・・こうした基本条件が備わっているところでは、旅行産業と経済発展にとって、テーマパークは完ぺきな商品だ」と分析する。
テーマパーク業界の国際NPO、テーマエンターテインメント協会によると、東京ディズニーランド、東京ディズニーシー、大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパン、韓国ソウル郊外のエバーランドは、09年の来園者数で世界のテーマパークの10位以内に入っている。
アジア市場の有望性に後押しされ、ユニバーサル・スタジオは米国版を抜く世界最大のテーマパークを韓国に建設する計画だ。ディズニーランドも上海で新パーク建設にこの秋から着工する。
■次世代の「世界の消費者層」
アジア開発銀行(ADB)の最近の調査によると、アジアの中流層は飛躍的な割合で増えており、世界最大の消費者グループになりつつある。
アジアの発展途上国でADBが中流層に大別した人口は、1990年には5億6500万人だったが、2008年にはその3倍を超える19億人にも達した。
中流層の増加が最も著しいのは中国だ。1日当たりの所得が6~10ドル(500~850円)の国民は95年には総人口の4.8%だったが、07年には25.5%にまで増えた。インドでも、この所得層は93-94年には29%だったのが、04-05年には38%に増えている。
アジア域内の中流層の旅行者増により多大な恩恵を受けているのは、人口わずか500万人の小さな富裕国シンガポールだ。この7月には前述のユニバーサル・スタジオ効果もあり、月間過去最多の110万人がシンガポールへ渡航した。同国への旅行者を国籍別で見ると、上位5位にはインドネシア、中国、マレーシア、インド、オーストラリアが入っている。
ADBは「経済発展するアジアの人口が中流層として確立するにつれ消費者層も拡大しており、次世代の世界の消費者層として、これまで米国や欧州の中流が担ってきたような役割が多大に期待できる」と報告している。