事故を起こした焼肉チエーンは非常に安価なことで知られており、加えて高級感のある店づくり、サービスの質も高く、感性価値という点でも評価されていたという。
社長の記者会見を見たが、全てにおいて理解を得れる会見ではなかった。
しかし社長が会見で「厚生労働省の基準に生食に関する明確な定義はない」と語った。確かに魚、鶏肉、豚肉も同じで、調理または提供する時に食中毒を起こす菌の量を測り、どの程度なら提供しても良いのかその基準は示されていない。
最後に開き直った様子で、このような事故が起きないようにするには「精肉の生食を全て禁止するしかない」と発言。これも食中毒による健康被害をなくすための一つの手段ではある。しかしそのようなことは難しい、生モノを提供する商店や飲食店がなくなることになりかねない。
似た話で、神社仏閣で行われる祭りを思い起こしていただくと分かるが、祭りの時には多くの屋台が境内に所狭しと軒を並べる。しかし消防法的には全く通らない話で、それは以下によるさまざまな危機が想定されるからです(現在は随分改善されている)。
- 文化財や可燃性のモノの周辺でのプロパンガスを用いた生火の使用
- 漏電が懸念される簡易電気工事
- 非常時の避難経路の確保ができていない
- 緊急車両導線の確保ができていない
- スムーズな消防活動、救護活動ができない など
こんな面白い話がある。消防が改善を申し入れに行くと「我々は消防や法律ができる、ずーと昔からやっていること、心配はいらない」と一蹴されていたという。また、今では随分改善されたが屋台の衛生面も同様である。
古くから形態が変わらない祭りには歴史文化の継承という側面があり、ガチガチに法で囲い込むと開催できなくなる。よって現行法では開催できないが、現行法が求める同等の安全を他の手段によって担保できると判断された場合のみ、歴史文化の継承という点をかんがみ開催を許可している。
つまり生食も同じようなもので、生モノ販売・調理提供は古くからある商売で、健康に影響を与える菌があることが分かるまでは、調理をする側とそれを食べる側の経験や知識によって安全か否かを判断してきた。調理についてはこちらも食文化という側面もあり、かつ商売のプロセス上、販売もしくは提供時の菌の種類と量を測定し、定められた安全基準であるか確認して提供するといのは現時点では不可能といえる。
いままでに起こった食中毒事故では、明らかな衛生環境の不備が指摘される案件以外は、厚生労働省は表に出ることはなかったと記憶している。つまり今回のような事故は、上記のような背景があり厚生省としても悩ましい問題となるため明確な安全対策について発言できないのが現状である。
つまるところ生モノの扱いについては、調理や提供者の衛生管理の徹底は当然のこととして、食べる側にも知識と覚悟が必要だということを認識しなければならない。
これから食中毒の発生が増える季節、以下を参照いただき知識を深めていただければと思う。
食品衛生についてはこちらをご覧ください。
http://homepage3.nifty.com/takakis2/eisei.htm#saikinsei
菌性食中毒と扱いの注意点についてはコチラ。
http://homepage3.nifty.com/takakis2/saikin.htm
※本投稿は食中毒事故を引き起こした企業を庇護するものではありません。
生モノの取り扱いや食中毒について知っていただくことを目的に投稿したものです。