中国の雑誌「世界知識」の中で、震災後の日本について触れた記事が紹介されていた。震災の影響が今後の日本と中国、アジアとの関係をどう変えるのかを端的に述べられている。日本のメディアでは書けないであろう表現もある。他国では震災をこのように見ているのかということが分かる。
(1)の「日本は何と言っても超高齢社会に突入している。第二次世界大戦後に廃墟から復興し、さらに高度経済成長を遂げたあの奇跡を再び起こすのは難しい」については、十分な社会制度がない中で、高齢化、少子化(一人っ子政策)が進めば日本以上に中国の方が深刻な状態になるのでは思う。
【011.4.25人民日報より】
大地震と津波、そしてそれに伴う核危機により、日本経済は厳しい試練に直面した。また、この大災害は世界的な大災害の特徴も備えている。災害の全過程をよく観察すると、以下のような示唆を得ることができる。
(1)震災の中で日本国民が取った態度は賞賛を得た。復興・再建のプロセスでも、日本国民はすばらしい態度を取り、堅忍不抜の精神を見せてくれるだろう。し かし、日本は何と言っても超高齢社会に突入している。第二次世界大戦後に廃墟から復興し、さらに高度経済成長を遂げたあの奇跡を再び起こすのは難しい。日本の国力が衰退に向かいつつあるのはすでに避けられない事態となっている。
また、今回の災難により、日本の自然条件の過酷さがより露呈した。日本は戦後、これほど過酷な自然条件の中でも世界第二の経済大国に上り詰めたが、今回の災害で、国の発展は、自然が与える発展の「限度」を大幅に上回ることはできない、ということが良くわかった。自然への過度な要求と「征服」は、必然的に自然からの罰をもたらすことになる。
(2)地震が多発する日本のような国で50カ所以上の原発を建設するには、厳密な管理体制と優秀な人材が必要だ。今回の原発事故では、日本の原発安全管理の盲点、人材不足が露呈した。
(3)今回の原発事故は、全世界の原発事業に重要な教訓を与えた。ある意味では、莫大な代償を払って今後の世界原発事業に貢献を果たしたとも言える。
(4)今回の原発事故は、国の安全問題が多元化したことを反映している。原発の安全は、国のエネルギー安全問題から派生した課題の一つだ。国は様々な安全問題を直視しなければならない。これらの問題は、軍事上の安全問題と互いに独立しつつも関係がある。大地震の発生前、日本の指導者はいわゆる「中国の軍事的脅威」への対応ばかりに気を取られ、福島原発の事故や隠蔽問題に関しては全く準備がなかった。これは安全観に問題があるということだ。本当に国民の利益を考えた安全観が形成されていなかった。
(5)福島原発は、米国からの支援と支持を受けて建設・設計されたものだ。しかし、福島原発で問題が発生したとき、米国から日本へのいわゆる「保護」には限度があることがわかった。米国が優先したのは自国の軍人と救助隊の命であり、彼らを放射能の脅威から遠ざけることだった。これは核問題における米国からの保護という神話から日本人を目覚めさせることとなった。
(6)未曾有の災難により、日本の国力は衰退し、「中強日弱」の流れが加速するだろう。これは、中日関係が今後新たな時期に入ることを意味する。改革開放以来、日本は対中援助を通じて両国のウィンウィンの関係を築いてきたが、今後は中国が対日援助を通じてウィンウィンの関係を築くという形に転換する可能性がある。中米日の関係も、日米が軍事的に共同で中国に対峙するといった従来の構造から、比較的バランスの取れた三角関係に転換していく可能性がある。どのみち、中日両国は新たな時期の両国関係に向け、しっかりと準備する必要がある。
(7)今回の災害により、アジアないしは世界各国の人々の間で一体感、連帯感が強まった。国際関係に深刻な影響を及ぼす可能性もあるが、少なくとも国家間の相互支援、相互支持、共により安全な世界を作るという「全世界人民の大団結」という精神が強まったことは確かだ。
(8)地震、津波に伴う放射性物質漏えい事故により、中日などの東アジア国家・地域では、原発の安全に向けた協力を強化する必要性が強まった。中国大陸、韓国、台湾なども多くの原発を抱えている。特に中国大陸では、2009年までに沿海地域に6カ所の原発が完成しており、さらに10カ所が建設中となっている。しかも、中国も地震などの自然災害が多発する国だ。このため、日本の大地震からどれだけの教訓を学び、原発の安全問題にいかに対処していくかは、中日を含む東アジア国家・地域の共通の課題となっている。
(9)日本の大地震は人類の活動とは直接的な因果関係のない大災害だったものの、自然の力の強大さが明らかとなった。この災害は、環境汚染・温暖化・砂漠化拡大・熱帯雨林の消滅など、人類の活動と因果関係のある大災害に対し、人類が一致団結して、共同で対処していかなければならないと人々に警鐘を鳴らしている。これらの災害は地震や津波のように突発的ではないが、静かに、慢性的に人類の住処を破壊しつつある。今回の災害は教育という役割も持っている。世界各国、特に環境をめぐり命運を共にする近隣国家間が、国家間の問題を解決する上で有益な示唆となった。
出所:2011.4.25人民日報