2012/05/23

ハリー・ポッター導入で、ニヤリとしたUSJ社長の胸の内を探る

今月10日ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)は、2014年下半期に「The Wizarding World of Harry Potter(ハリポタ)」をオープンさせると発表した。この席で、あまり笑顔を見せないUSJ社長グレン・ガンペル氏が、記者からの入場者数についての質問に、年間100万人規模の集客増を確信していると、ニヤリとしたという。この話を聞いて、ニヤリには様々な思いや理由があるのだろうと推測してみた。

2012/5/12 JCASTより
ニヤリ(1)
経営危機に陥っていたUSJを何とかここまで再建できたことへの想いから「ニヤリ」

ニヤリ(2)
伸び悩む入場者数を大きく増やせること、つまり売上増になることに「ニヤリ」

ニヤリ(3)
上場廃止後、5年で企業価値を高め再上場の計画という。それが事実なら、上場の力となり、株価も期待できると「ニヤリ」

ニヤリ(4)
言いますまい。以下より察してください。ニヤリ。

ハリー・ポッター導入でニヤリとしたUSJ社長の胸の内を解くためには、USJの経営の歴史を振り返る必要がある。USJは大阪市が筆頭株主の第三セクターとしてスタート、2001年に開業した。USJも各地の第三セクターのテーマパークなどの余暇施設同様、大阪市をはじめ土地所有企業の株主などの寄り合い所帯経営により赤字経営が続いた。開業後追加されたアトラクションの建設にかかわる数十億円の建設費用が予定通りに支払えない状況にまで陥っていたと伝わっており、経営の建て直しは予断を許さない状況になっていたという。これを受け大阪市へ融資依頼を行ったが議会で否決され、まさに緊迫した経営状況になったという。

予断を許さない状況の中、経営再建を目指し、ユニバーサル・スタジオの運営の権利を所有・管理するユニバーサル・パークス&リゾーツの当時幹部であったグレン・ガンペル氏が2004年に社長に就任し、早期退職を含む大幅な経費削減や土地所有者への賃貸料値下げを行いながら、企業再生に向け経済産業省の「産業活力再生特別措置法(プロジェクトファイナンス)に基づく事業再構築計画」の承認を得るために動いた。2005年に承認を得てゴールドマン・サックスのグループ会社である有限会社クレインホールディングスを通じ250億円の増資を得た。この時点で筆頭株主が大阪市から有限会社クレインホールディングス(クレインHD)となった。

2007年に東京マザーズに上場、その後僅か2年で、GSの孫会社であるSGインベストメンツ株式会社(GSI)によるTOBによる株式買い付けを行い、上場廃止となる(※報道ではTOBとされていたが、実際には筆頭株主であるクレインHDの子会社にUSJの経営陣が役員として参加していたことから事実上MBOと思うのだが)。※GSIはUSJの株式買い付けのためにつくられた会社

これらにより、大阪市は所有株式を売却、USJへの貸付150億円も返済され、市民の税金の一部でも帰ってきたことは良かったと言えるだろう。またUSJは、大阪市からの貸付金以外の借入金400億円の返済も行ったという。

上場廃止後、USJの株式はGSI(USJの持ち株会社)が所有し、同時にGSIを存続会社とし、株式会社ユー・エス・ジェイを消滅会社とする合併を行い、同日存続会社の社名をユー・エス・ジェイとし商号の変更を行った。つまり、開業時の株式会社ユー・エス・ジェイは存在しないということだ。

ここ数年のUSJは、年間入場者数800万人で横ばい状態。ハリポタを最初に導入したオーランドでは、前年比30%増を達成している。USJでも同様となれば、年間入場者数が開業初年度以来の1,000万人超えも夢ではないだろいう。

再上場が事実であれば、これほど力になるものはなく、株価も期待できる。また、今国会中に法案提出の可能性が囁かれている「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案(インテグレートリゾート(IR)推進法案、通称カジノ法案)」が通過すれば、東京と並んで大阪が最初の指定都市になる可能性が高いという。そうなると施設が完成するには、早くても8年ぐらいはかかると思うが、これもUSJの再上場には大きな力となり株価にも大きく影響するだろう。そして、インテグレートリゾート完成を前に大胆な投資も行われ、USJの魅力は増々高まるだろう。ニヤリ。

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